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生涯の年収を大きく左右する「性格と仕事の適合ボーナス」という考え方

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良い性格の人ほど年収が高いのは間違いないが…

性格と年収に関係があるのは有名な話。たとえば、世界の上位2.5%の金持ちは失敗を他人のせいにしなかったりとか、勤勉で忍耐力がある人のほうが年収が高かったりとか。ざっくり言えばマジメでコツコツやる人ほど収入面では有利、みたいな話です。

 

 

そんななか、新しい論文(1)では「もっと大事なのは性格と仕事のマッチングだ!」って結論になってておもしろかったです。

 



性格と仕事内容のマッチングで年収が変わる

これはティルブルフ大学の研究で、8,458人のドイツ人が対象。ドイツで行われた国民調査のデータをベースにした観察研究になっております。サンプルの平均年齢は43才で、男性68%女性32%。

 

 

このデータは参加者のビッグファイブと職業、年収などを記録してるんで、それぞれの対応をくらべることができるんですな。「ビッグファイブってなに?」という方は、「5分で自分の正しい性格を把握する「簡易版ビッグファイブテスト」」などをご覧ください。

 

 

で、各自の性格・職業・収入の関係性をくらべたところ、

 

  • 外向性、調和性、開放性の3つは、仕事の内容とマッチしてたほうが年収は上がる

 

って結果が出たそうな。たとえば、社交的じゃない人の場合は、外向性が必要な仕事(営業とか)よりも、外向性の重要度が低い仕事(天文学者とか)に着いたほうが年収は上がりやすいってことですね。この状態を、研究者は「適合ボーナス」と呼んでおります。

 

 

いっぽうで神経症傾向については、あんまり仕事内容のマッチングとは関係がなかったそうで、ちょっと不思議なとこですね。まぁ神経症傾向が高いとあらゆる職業で不利になりそうなんで、大きな差が出ないのかもしれません。

 

 

「マジメな性格」にすらデメリットはあり得る

さらに、この研究ではもうひとつおもしろい知見が出ていて、

 

  • 誠実性・調和性・開放性の3つのいずれかが、その職業に必要なレベルよりも高すぎる場合は、逆に年収は大きく下がる

 

って傾向もあったそうな。一般的には誠実性や調和性なんかは「好ましい性格」と考えられるんですけど、あんまり数値が高すぎてもよくないらしい。

 

 

研究者いわく、

 

従来の研究では「適応的」と考えられてきた性格特性は、職業によってはメリットが出ないどころか、害をもたらすケースもあるようだ。

 

たとえば、誠実性がとても高い人が誠実性を必要としない職業についた場合は、誠実性が低い人が誠実性を必要とする仕事についた場合よりも、年収は低くなる傾向があった。

 

とのこと。「万能能力」と呼ばれる誠実性にすら、デメリットはあり得るわけですね。もちろん、相変わらず誠実性が重要なのは変わりませんけど、なかなか難しいところです。

 

 

真の年収はパーソナリティと環境の組み合わせで決まる

さらに研究者いわく、

 

今回の研究は、「パーソナリティ特性」と「仕事の内容」のマッチングが、収入のように重要な結果を左右することを示した。

 

これまで、個人の生涯年収は、それぞれのパーソナリティに左右されると考えられてきた。しかし、実際はもっと複雑だ。本当に年収を予測するには、パーソナリティと環境のコンビネーションを考えねばならない。

 

 とのこと。といっても「この職業にはどの性格が必要なのか?」ってのは判断が難しいとこなんで、現時点では「リアセックテスト」などを基準にしたほうが有用かも。いずれにせよ、

 

  • 誠実性は上げといて損はないが、職業とのマッチングには注意
  • 神経症傾向の高さはとにかく不利なので、対処できるようにしとく

 

 ってのは心がけたいとこです。どうぞよしなに。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。